宇宙物理学研究室へようこそ


本研究室では,宇宙初期から現在に至るまでの宇宙進化の研究と,ブラックホールや中性子星のような強重力天体の物理 について研究しています.このような物理現象を扱う基盤の重力理論として,アインシュタインの一般相対論があります. 一般相対論は,太陽系での重力実験で信頼できる理論であることが分かっていますが,宇宙の開闢の頃の超ミクロスケール, および現在の宇宙の膨張が関連するような大スケールでは,理論の精度が完全に検証されていません.
一般相対論を宇宙の過去の極限まで適用すると,理論が特異点の存在を予言します.宇宙がプランク長より小さかった時期では, 重力が自然界の他の3つの力と統一されていたと考えられており,そのような超ミクロの領域では,時空自体を量子的に扱う 量子重力理論が必要となります.そのような拡張された重力理論の候補として,弦理論やループ量子重力理論のようなアプローチ があるもの,一般相対論を内包する力の統一理論は完成していません.
その一方で,宇宙背景輻射の温度揺らぎの観測から,宇宙初期に起こったと考えられているインフレーションという加速膨張の 模型に強い制限が得られ始めており,この現象は一般相対論を内包する統一理論と関連を持つと考えられています.インフレーション 期には重力波も生成されますが,それによる原始重力波は未だ検出されていません.しかし,もし将来発見されればインフレーション の模型をほぼ同定することができるため,その検出のための観測が世界的に進行しています.これにより,超高エネルギー状態での 一般相対論の検証だけでなく,宇宙開闢の謎に迫ることが可能になると期待されています.
さらに1998年の超新星の観測から,現在の宇宙も加速膨張をしていることが発見されました.この加速膨張の起源は暗黒エネルギーと 呼ばれており,現在の宇宙の全エネルギーの約70%を占めていることが観測から明らかになっているものの,その起源は 依然として不明です.現在の宇宙の膨張が関係するような大スケールで,一般相対論が何らかの変更を受けている可能性も否定できず, そのような観点での研究は世界的に活発に行われています.また,宇宙の大規模構造の形成は重力収縮によって起こりますが, その主役となるのは暗黒物質というこれもまた未知の物質で,現在の宇宙の全エネルギーの約25%を占めています.つまり, 現在の宇宙の95%は暗黒エネルギーと暗黒物質という正体が不明の何かであり,それらの起源の解明は今世紀の物理の最大の課題 と言ってよいかもしれません.
2015年の観測で,アインシュタインが予言した重力波がちょうど100年の時を経て,ブラックホール連星系から検出されました.さらに 2017年の観測で,中性子星連星系からの重力波も見つかり,重力波の伝搬速度が光速に非常に近いことが明らかになりま した.これによりー般相対論を拡張した理論に基づく暗黒エネルギーの模型に対して強い制限が得られました.このような宇宙の局所 天体からの重力波の観測によって,強重力場中での物理現象を探ることも可能になったため,重力波天文学の本格的な到来は様々な スケールでの重力理論の詳細な検証に今後大きく寄与していくはずです.
このように宇宙にはまだまだ謎が多く,今後の様々な観測によってさらに予期せぬ宇宙の姿が明らかになってくるかもしれません. 本研究室では,このような宇宙の謎を解き明かすことを最大の目標としています.

NEWS & TOPICS

  • 論文 arXiv:2109.12288 (S. Panpanich, K. Maeda)を投稿しました. (2021.9.25)
  • 論文 arXiv:2109.12091 (T. Kitamura, S. Miyashita, Y. Sekino)を投稿しました. (2021.9.24)
  • 論文 arXiv:2107.11054 (B. Navascués, G. Marugán, S. Prado)を投稿しました. (2021.7.23)
  • 論文 arXiv:2107.08061 (S. Tsujikawa, C. Zhang, X. Zhao, A. Wang)を投稿しました. (2021.7.16)
  • 論文 arXiv:2106.12273 (S. Miyashita)を投稿しました. (2021.6.23)
  • 論文 arXiv:2106.11222 (J. B. Jiménez, D. Bettoni, D. Figueruelo, F. A. Teppa Pannia, S. Tsujikawa)を投稿しました. (2021.6.21)
  • 論文 arXiv:2106.05628 (B. Navascues, R. Jimenez-Llamas, G. A. Marugan)を投稿しました. (2021.6.10)
  • 論文 arXiv:2105.14661 (M. Minamitsuji, S. Tsujikawa)を投稿しました. (2021.5.31)
  • 論文 arXiv:2104.15002 (B. Navascues, G. A. Marugan)を投稿しました. (2021.4.30)
  • 新しいメンバーを追加しました. (2021.4.1)
  • 論文 arXiv:2103.12342 (S. Tsujikawa)を投稿しました. (2021.3.23)
  • 論文 arXiv: 2102.06417 (V. Salzano, S. Tsujikawa et al)を投稿しました. (2021.2.12)
  • 論文 arXiv:2102.00124 (B. Navascues, G. Marugan)を投稿しました. (2021.1.30)
  • 論文 arXiv:2012.12204 (J. B. Jimenez, D. Bettoni, D. Figueruelo, F. A. Teppa Pannia, S. Tsujikawa)を投稿しました. (2020.12.22)
  • 論文 arXiv:2011.11894 (T. Fujita, K. Murai, H. Nakatsuka, S. Tsujikawa)を投稿しました. (2020.11.24)
  • 学振外国人特別研究員のBeatriz Elizaga Navascuesさんがメンバーに加わりました. (2020.11.16)
  • 論文 arXiv:2008.13350 (Ryotaro Kase, S. Tsujikawa)を投稿しました. (2020.8.31)
  • 辻川研究室の日本語版のホームページを立ち上げました. (2020.07.29)
  • 辻川が早稲田大学理工学術院先進理工学部物理学科に着任しました. (2020.04.01)